書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

真田合戦記

幸綱雄飛篇

幡大介 /著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年11月6日
価格:660円+税
判型:文庫

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 さなゆきむらの祖父であり、戦国期の真田家躍進の基盤を作ったゆきつなを活写した、「真田合戦記」シリーズの第三弾が、早くも登場した。頼りにした関東かんれいやまのうちうえすぎ家の威勢が張りぼてに過ぎないことが明らかになり、去就に迷う真田ノろうさぶろう(後の幸綱)。父親ののぶとらほうちくしたものの、すべてを家老にろうだんされているたけはるのぶ(後のしんげん)。どうぼうことやまもとかんすけによって、この二人が通じ合ったとき、信濃の歴史が鳴動する。
 俗に〝真田三代〟というが、昌幸・幸村父子に比べ、幸綱を主人公にした作品は少ない。だがそれだけに、新鮮な気持ちで本シリーズを読めるだろう。智謀を尽した幸綱の戦いは、どうもくすべき面白さだ。ついに名を幸綱と改め、本格的に戦国の世に乗り出した男の人生を、じっくりと堪能したい。
 また、周囲から抑圧され小心者になった武田晴信など、歴史上の人物の造形もユニークだ。このレベルの戦国小説が、文庫書き下ろしで読めるとは、なんとも幸せなことである。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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