書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

もののけ犯科帳

疫病神ちちんぷい

高橋由太 /著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年11月6日
価格:610円+税
判型:文庫

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 妖怪あらためかた同心のふゆさかとうを中心に、人間と妖怪が入り乱れる、たかはしの「もののけ犯科帳」シリーズの第三弾が刊行された。今回、刀弥たちが立ち向かうのは、江戸に死病を振りまく〝疫病神〟のおだ。
 といってもお美津は、元人間である。江戸に来たのも、人恋しさのあまりだ。そこに誤解からいじけてしまい、刀弥の許嫁いいなずけかけいとうのもとを飛び出した雷獣のクロスケが絡まる。さらに、幕府転覆を企むおとぜんと子分のおも登場。入った人間は出られない妖かしの森で、すったもんだの大騒動が繰り広げられるのだった。
 いつものように、刀弥や妖怪たちのやり取りは軽快である。しかし江戸壊滅の危機には、重い原因があった。長年の孤独に耐えかねたお美津の気持ちは哀れであり、さらにその裏に潜んでいたある人物の無惨な運命に、涙せずにはいられない。この軽さと重さのギャップから湧き立ってくる、独特の味わいが、シリーズならではのポイントといえよう。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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