幕府直轄の薬草園で働く元岡真葛は、女性ながらも薬草の知識と医術の腕に長けている。そんな彼女の活躍を綴る「京都鷹ヶ峰御薬草園日録」シリーズの第二弾が刊行された。収録作は六篇。冒頭の「糸瓜の水」は、常房総三州での採薬の旅が終わった真葛が、江戸の小石川御薬園に渦巻く確執と、それに端を発した騒動に巻き込まれる。
以下、「瘡守」「終の小庭」は、京都に帰る道中の真葛が、さまざまな事件に遭遇。後半の「撫子ひともと」「ふたおもて」「師走の扶持」では、鷹ヶ峰御薬園に戻った真葛が、ようやく再会した脇役陣と共に、やはり事件や騒動にかかわっていく。どの作品も薬草や医学の知識が盛り込まれており、袖振り合った人を救うため一所懸命に奔走するヒロインの行動を、豊かに彩っている。
また、すべての話の核となる部分に、家族や男女の情愛が横たわっている点も留意したい。そうした人々の心を知った真葛の、しなやかな成長も、本書の読みどころだ。