書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

師走の扶持

京都鷹ヶ峰御薬園日録

澤田瞳子 /著

出版社:徳間書店
刊行日:2015年11月10日
価格:1,600円+税
判型:四六判上製

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 幕府ちょっかつの薬草園で働くもとおかくずは、女性ながらも薬草の知識と医術の腕にけている。そんな彼女の活躍をつづる「京都鷹ヶ峰御薬草園日録」シリーズの第二弾が刊行された。収録作は六篇。冒頭の「糸瓜へちまの水」は、じょうぼうそうさんしゅうでの採薬の旅が終わった真葛が、江戸の小石川御薬園に渦巻く確執と、それに端を発した騒動に巻き込まれる。
 以下、「かさもり」「ついの小庭」は、京都に帰る道中の真葛が、さまざまな事件に遭遇。後半の「なでしひともと」「ふたおもて」「師走しわす」では、鷹ヶ峰御薬園に戻った真葛が、ようやく再会した脇役陣と共に、やはり事件や騒動にかかわっていく。どの作品も薬草や医学の知識が盛り込まれており、袖振り合った人を救うため一所懸命に奔走するヒロインの行動を、豊かに彩っている。
 また、すべての話の核となる部分に、家族や男女の情愛が横たわっている点も留意したい。そうした人々の心を知った真葛の、しなやかな成長も、本書の読みどころだ。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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