書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

北天に楽土あり

最上義光伝

天野純希 /著

出版社:徳間書店
刊行日:2015年10月9日
価格:1,800円+税
判型:四六判上製

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 戦国武将のがみよしあきは、権謀術数を駆使して国の大大名に成り上がったことから〝出羽の狐〟と呼ばれている。だが、その実像はどうだったのか。俊英・あますみが、ほうへんの激しき男の人生に、果敢に挑んだ。
 民の安寧と家族の幸せを願う義光。家督相続で父親と骨肉の争いを演じたり、甥のまさむねと戦ったのも、すべてはその為であった。こうした義光の、優しい理想を実現したいが故に、はかりごとを巡らせずにはいられない人間像が、とよとみとくがわと流れゆく時代の中で、活写されているのである。
 また、おうの地で繰り広げられる合戦の描写も優れている。特に、天下の行方ゆくえを左右することになる、最上軍とうえすぎ軍の戦いは、迫力満点。結果を知っているというのに、手に汗握ってしまったのだ。
 さて、義光亡き後の最上家の運命は、非情にして無情である。でも作者はラストで、フィクションによる一筋の救いを与えてくれた。それは作者が義光に捧げた、けの花であろう。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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