書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

特命

残酷な月

和久田正明/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年10月9日
価格:640円+税
判型:文庫

amazon.co.jpセブンネットショッピング

TSUTAYAオンラインショッピング楽天ブックス

 前後篇の大作から始まった、和久田正明の「特命」シリーズも、本書で第三弾となった。南町奉行のぎしぜんのかみが作った、凶悪な犯罪をおんみつに取り締まる隠し役所『特命』に所属する、かえりやまさぶろうふかくさしん。彼らの活躍を注視していた老中が命じたのは、えち国のおにぶせ藩の不審な動向の調査であった。幕府隠密ですら歯が立たない、鬼伏藩の秘密とは何か。探索の手助けをする、りんとうしまつと共に、貴三郎と新吾は敵地に乗りこむ。
 ページをめくっているうちに「特命同心心得の条」なんてフレーズが浮かんだ。作者がテレビ時代劇の脚本を、多数手がけたことを知っていたからか。いや、冗談はともかく、シナリオライター時代に鍛えた腕前は、本書でも遺憾なく発揮されている。キャラクターの立たせ方や、テンポのよいストーリー、随所に仕込まれた意外性など、面白さは抜群だ。陰謀うずく鬼伏藩で、あえて危険地帯に踏み込む四人の、硬軟取り混ぜた探索が、とことん楽しめるのである。

細谷 正充

ほそや まさみつ

著者紹介ページへ
[PR]