書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

日比野左内一手指南〈三〉

愛されて候

牧秀彦/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年10月9日
価格:670円+税
判型:文庫

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 好調な「ない一手指南」シリーズも、第三弾となる本書で完結を迎えた。短篇六作が収録されているが、第二話「兄はやってきた」でキー・マンである主人公の腹違いの兄が登場すると、一気にストーリーが進展する。藩士の左内が深川で五つぼ道場の主になった原因である、父親のやみち事件の真相が明らかにされたのだ。
 さらに以後の話で、状況はエスカレート。ついには加賀百万ごくの存亡を左右するほどの騒動に拡大していくのだ。そして最終話「無我の剣」で左内は、すべての元凶である最大の敵と対決。多くの人々によってつちかわれた、迷いなき一撃で、加賀藩の暗雲を晴らすのだ。キビキビした文体でつづられるチャンバラは、シリーズの決着に相応ふさわしい迫力であった。
 また、相思相愛でありながら、男女の仲になれないでいた、左内とあまがさき藩のあかね姫の件も、好ましい場所に着地する。最後の最後まで、読者の期待にこたえた、痛快な時代エンターテインメントである。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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