書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

もののけ犯科帳

吸血鬼にゃあにゃあ

高橋由太/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年10月9日
価格:620円+税
判型:文庫

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 高橋由太の「もののけ犯科帳」シリーズの第二弾が、早くも刊行された。前巻が短篇集だったのに対して、本書は長篇だ。江戸を騒がす吸血鬼騒動に現れた謎の異国人ミクニ。その正体は、愛する者を殺した吸血鬼を追ってきた、妖かし斬り師であった。そのミクニも絡んで、妖怪あらためかたと飯屋「いなてい」の面々は、騒動にかかわっていく。
 一方、吸血鬼側でも、人間の娘との恋物語が進行する。しかし、その先に見えてきたのは、人間のみにくさと愚かさであった。とはいえ、人には善性もある。前巻の扱いからコメディ・リリーフだと思っていた、妖怪改方の腰抜け筆頭与力・しなじんの意外な性根が明らかになり、一服の清涼剤となっているのだ。
 そして人の善悪両面が表現されたところで、ようやく気がついた。本シリーズは〝もののけ〟という存在を通じて、人間を描いているのだと。ユニークかつバラエティに富んだ妖怪たちが、私たちの心の底をあらわにするのである。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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