加賀藩の上士の家に生まれた日比野左内は、複雑な仇討の事情を抱えて、江戸で中条流の剣術道場を構えていた。また、訳ありの人たちのために、ひそかに仇討の一手指南をしている。そんな若者の、清々しい行状を綴ったシリーズ第二弾の登場だ。
本書には短篇三作が収録されている。第一話「対決・中条流対十手術」は、歪んだ心を抱える南町奉行所同心と、左内が対決することになる。第二話「一手指南、再び」は、婚礼を控えた町娘の頬に一太刀を浴びせる辻斬り騒動を収めるために、受け太刀の力が発揮される。
そして第三話「蜘蛛糸の太刀」は、なんと「陰流・闇仕置」シリーズの主人公・松平蒼二郎が出現。左内との夢の対決が実現する。もともと本シリーズは、「塩谷隼人江戸常勤記」シリーズともリンクしており、作者のファンとしては大喜びであった。そこにさらに、別シリーズまで絡んでくるとは……。牧ワールドの主人公揃い踏みに、興奮してしまうのである。