書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

高瀬川女船歌〈七〉

奈落の顔

澤田ふじ子/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年9月4日
価格:660円+税
判型:文庫

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 京都のたか川沿いに生きる人々の哀歓を見つめた「高瀬川女船歌」シリーズも、本書で七冊目となった。元武士で、現在は居酒屋「わり屋」の主人をしているそういんを中心にして、六つの騒動が披露されている。
 冒頭に収録された「因果な夜」は、運命のいたずらから起きた悲劇を、宗因たちが食い止めようとする。続く「二本の指」は、悪い過去を捨てて、真っ当に生きようとする男を、宗因が助ける。また、表題作の「奈落の顔」は、死んだけ屋の意外な過去の出来事と、誇り高き人生が明らかにされる。詳しく紹介できないが、他の収録作も優れた内容だ。興味深いストーリーを通じて、人の世の厳しさと温かさが、見事に表現されているのである。
 さらに随所に挿入された、作者のしんげんも読みどころ。一例を挙げておく。「人に必要なのは、自分は何者でもなく、必ず死ぬ存在であるという深い認識と覚悟であろう」。このような箴言に接する度に、大いに身が引き締まるのだ。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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