戦国武将信長としての人間関係
麻嶋 それは楽しみです。今回は岐阜縛りということで、映画ではなく舞台のような感じですよね。さぞや大変なのではないかと思いますが。
早見 それは、かえってやり
麻嶋 舞台は岐阜限定だけれども、物語自体は広がっているということですね。
早見 そうですね。ほかに、対立軸というのを考えたときに、
麻嶋 信長を書きませんかと言われたときに、最初に龍興が出てきた感じなのですか。
早見 最初、というか、岐阜庶民との交わりということがまず頭に浮かんで、そこから信長が岐阜をつくることによって当然いろいろな
麻嶋 龍興と帰蝶のふたりにぜひ注目、期待してほしいということですね。
早見 そうですね、やはり帰蝶との関係は想像の世界ですけど、帰蝶とどういうふうになっていくのか、ということですね。当然策伝の活躍もあるんですが、信長が追った者ふたり、龍興は敗死してしまい、帰蝶は信長のもとに戻るのかというところ。それから覇道を突き進んでいく上で、鬼になっていかざるを得ない信長と、反面で笑いを好む、笑って暮らせる世の中をつくるんだというその顔ですね。岐阜・
麻嶋 「好きで戦っているんじゃない」という
早見 お前たちがほんとうに暮らしていける世の中にしたいんだ。だけど、そうするにはな――。と、そこで悩む信長というか。決して神様でもなんでもないわけだから、全部見通せるわけはない。多くの計算違いがあったり、思いもかけない罠があったり、葛藤が現れたり、誤解が生じたりというなかで、正しい判断ばかりすることはできないわけです。間違った判断をしてしまっても、また、それが原因で敗北してしまっても、勝利にもがき続けるひとりの武将としての信長がいるはずなんですよね。
麻嶋 功罪が同居して、言動が矛盾していながらも、それを自覚してもがく信長ですね。第1回目の信長の描写から、この先の狙いがとてもよく伝わってきます。また、小説の冒頭から登場する
早見 やはり陽性の秀吉を描きたいという気持ちもありましたからね。秀吉も
麻嶋 2回目には、信長がいよいよ鵜飼を見る場面が描かれていますが、読みどころとして力が入りましたか?
早見 その場面には、敵対する
麻嶋 美濃を獲った理由や、その後の行動の理由などもお書きになられていて、信長の人間像だけではなく、政治的経済的配慮についても、早見先生の自説をしっかり披露されているのが素晴らしいと思います。なるほどそうだったのか、という歴史の読み解き方を、整合性あるように組み入れるというのは難しいですけれども、その組み入れ方が巧いと思います。人間信長と武将信長の割合もちょうどいい具合ですし。
早見 それはやはり、信長に求める読者の楽しみというか、意外な面を知りたいというのと、自分たちが抱く信長の凄さというのも、描くべきだというのも当然あると思います。まったく戦をしない信長を描いてもね、討ち入りしない
麻嶋 たしかに仰る通りですね(笑)。名残惜しいのですが、そろそろお時間が……今日は本当にありがとうございました。章ごとの最終話に載るコラム「岐阜市歴史探訪」も楽しみにしています!
早見 ありがとうございます。ひとりでも多くの方に楽しんでいただけるよう、完走したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
(了)
信長といえば岐阜、岐阜といえば
編集部の方によると、普段の早見先生はとても物静かで、照れ屋だそうですが、今回のインタビューでは、ご自身の信長論、戦国時代の世界観、当時の岐阜の
また、途中で紹介されました、『常世の勇者 信長の十一日間』も、ぜひ手に取ってみてください。岐阜時代以前の信長と山科言継
次に掲載される最新話が今から待ち遠しいです!
「醒睡の都 岐阜信長譜」第1回目第1話はこちらです。
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佐々木裕一先生の「おにがみ」は、こちらからご覧いただけます。
秋山香乃先生も当サイトで、「夫婦逍遥 鳴かぬ蛍」を連載中です。
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