日本ファンタジーノベル大賞を受賞して、以後、時代小説を中心に活躍している。本書は、そんな作家歴を持つ
友達になった少女に
物語は全七話で構成されている。酒浸りの父親を助けようと、奉公先のイジメに耐える少年。愛した人を殺した男を、自分に仕えさせていたぶる姫君。幼い頃の罪を忘れた老婆……。さまざまな時代の、鬼の芽を持つ者を通じて、人が生きることの苦しみや悲しみや、罪と罰が活写されていく。
登場人物を見つめる作者の眼差しは優しいが、だからといって甘くはない。自分の罪や世の中の理不尽などを乗り越えなければ、希望は手に入らないという、作者の姿勢が貫かれているからだ。そこに本書の、たまらない魅力がある。