書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

真田合戦記

幸綱雌伏篇

幡大介/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年8月7日
価格:650円+税
判型:文庫

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 さなというと、戦国の世をしたたかに生きたまさゆきと、その息子で大坂の陣で名を馳せたゆきむらが有名である。だが、彼らが活躍する下地を作ったのは、昌幸の父親のゆきつなだ。本書は、その真田幸綱を主人公にした「真田合戦記」シリーズの第二弾である。
 もっとも本書の幸綱は、まだその名を使っていない。衰微したしげ一族の末葉・ろうさぶろうであり、信州善光寺のぎょうにん(商人)をしているのだ。滋野一族のために動いているが、本人は商人を続けてもいいかと考えている。
 だが、たけのぶとらが息子のはるのぶによって甲斐から追放されたことで、時代は大きく動く。さまざまな勢力が入り乱れる中、滋野一族の氏神である白鳥明神社に仕える巫女みこを助けて妻にしたり、よりしげの権威を失墜させたりと、精力的に行動する。まだ何者でもない次郎三郎の立場を活用し、時代の中で縦横無尽に活動させる、作者の手腕が素晴らしい。これほどの歴史小説が、文庫書き下ろしで読めるとは、実に嬉しいことである。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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