書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

幕末スパイ戦争

歴史時代作家クラブ/編

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年8月7日
価格:720円+税
判型:文庫

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 本書は『新選組出陣』に続く、歴史時代作家クラブ編の、書き下ろしアンソロジーの第二弾だ。ようてんどうしんすけあきらやすゆきかわこうろうほんりゅういちあしかわじゅんいちひじりりゅうひらよしの九人が参加している。
 テーマは〝幕末のスパイ〟だが、物語の内容は幅広い。さつえい戦争で躍動したやまぶし忍者が〝和魂洋才〟の境地を得る井川香四郎の「桜島燃ゆ」のような忍者を主人公にした作品があれば、会津藩士のおおきょうへいちょうりょうを通じて、攘夷派公家のあねがこうきんとも暗殺事件に肉薄した天堂晋助の「会津の隠密」のように、実在人物を取り上げた作品ありといった具合だ。
 また、しょうたい崩れの旗本が、敵地となった江戸に潜入する芦川淳一の「逃げる旗本」など、文庫書き下ろし時代小説シリーズを抱える作家が、普段とは違うテイストの秀作を発表しているのも興味深い。
 詳しく触れる余地がなくなったが、その他の作品も読みごたえ抜群。どこから読んでも楽しめる、アンソロジーの収穫である。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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