書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

織江緋之介見参〈一〉

悲恋の太刀

上田秀人/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年8月7日
価格:680円+税
判型:文庫

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 徳川幕府公許の御免色里〝吉原〟は、多数の時代小説の舞台になってきた。本書は、その吉原にふらりと現れた若侍・おりすけの活躍を描いた、痛快シリーズの第一弾だ。
 巨大な権力の思惑や陰謀に翻弄されながら、己の剣の腕前と、信じ合う仲間たちと共に道を切りひらく。うえひでの文庫書き下ろし時代小説シリーズでおみのパターンだ。それは本書にも当てはまる。
 吉原に現れた織江緋之介の出自。彼を執拗に襲う者たちの正体。緋之介を受け入れた、吉原を代表する遊女屋「いづや」の秘密(これが凄い!)。いくつもの謎が明らかになるにつれ、巨大な敵が見えてくる。権力に取りかれた者たちの攻撃方法は醜悪であり、だからこそ、緋之介の剣の冴えが輝くのだ。
 また、緋之介を愛する三人の女性の、それぞれの想いと心意気も読みどころ。男も女も、とにかくかっこういい。権力者と、長き戦いを繰り広げることになるヒーローの、最初の活躍を大いに楽しみたいのである。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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