鳥羽亮の「極楽安兵衛剣酔記」シリーズも、ついに大台の第十弾となった。料理屋「笹川」に居候しながら、極楽とんぼのように勝手気儘に暮らしている旗本の三男坊・長岡安兵衛が、今回かかわるのは、奇怪な辻斬り事件である。
料理茶屋「賀茂屋」の客が、幽霊と鬼に扮した辻斬りに、次々と殺された。困った「賀茂屋」の主人から、帰り客の用心棒を頼まれた安兵衛。結構な金にホクホク顔であったが、「笹川」の客まで斬り殺される。いきなり身近になった事件を追う安兵衛と仲間たちの前に、やがてどす黒い陰謀が浮かび上がってくるのだった。
巻を置く能わずとはこのことか。スピーディーな展開の物語を、夢中になって読んでしまった。もちろん、鳥羽作品のお目当てである、迫真のチャンバラ・シーンも、随所に挿入されている。安兵衛の〝とんぼ剣法〟の恰好よさに、ドキドキワクワクが止まらない。チャンバラ愛好家を〝極楽〟に案内してくれる、素晴らしい作品なのだ。