書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

高瀬川女船歌〈六〉

仇討ちの客

澤田ふじ子/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年7月3日
価格:660円+税
判型:文庫

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 きょうの中心部とふしを結ぶ高瀬川につどう人々を描く、さわふじの「たかがわおんなふなうた」シリーズも、本書で第六弾になる。あだちの旅でこんきゅうした少年と母親。それを見かねて、封印していた博才を解放したぼく。シリーズでおみの旅籠はたごかしわ屋」にとうりゅうする三人の事情を知った、居酒屋の主のそういんたちは、彼らの為にほんそうする。
 このエピソードをたていとにして、娘を思う母親の気持ちが暴走する「親のなさけ」や、けなに生きる子供のために宗因がひと肌脱ぐ「じょくの剣」など、収録された六篇は、どれも読みごたえあり。親子のきずなや、人の情けに、心があたたかくなるのである。
 しかし一方には、他者を思いやる気持ちが悲劇を招くという、衝撃的な展開もある。そこには、世界は幸せだけで成り立っているユートピアではないという、作者の厳しい認識があるのだ。喜びも悲しみも、とびっきり。だから、高瀬川のみなに映る人々のあいかんは、いつまで見ていても、飽きることがないのである。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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