日本駄右衛門・弁天小僧菊之助・忠信利平・赤星十三郎・南郷力丸。歌舞伎でお馴染みの義賊〝白波五人男〟が、幕末の江戸に参上。しかし時の大老・井伊直弼の意を受けた隠密の罠にかかり、人殺しの汚名を着せられてしまった。そこに駄右衛門の旧知の水戸脱藩浪士や、弁天たちを嵌めた女の事情も加わり、事態は紛糾。駄右衛門一味との殺し合いを望む隠密と、激しい闘いを繰り広げるのだった。
無頼に生きる五人男の肖像を、魅力的に立ち上げた作者は、桜田門外の変に至る流れを絡めながら、義賊と隠密の闘いを、迫真の筆致で綴っていく。力丸の肉弾戦。十三郎の大殺陣。利平の一撃。弁天の喧嘩殺法。駄右衛門の死闘。デビュー当初から、ユニークな格闘シーンに長けていた作者だけに、どのアクションも凄く、そして熱い!
さらに物語から浮かび上がる、五人男の毅然たる魂と、強い絆も、大きな読みどころになっている。痛快極まりない、江戸の悪漢小説なのだ。