本能寺の変で織田信長を討ち、天下人にもっとも近づいた明智光秀は、しかし山崎の戦いで羽柴秀吉に破れ、敗走の途中で落ち武者狩りに殺された。だが、秘かに生き延びたのではないかともいわれている。本書は、そうした光秀生存説を踏まえながら、彼の新たな活躍を描いた架空戦国小説である。
危機一髪のところを、四国の雄・長曾我部元親の放った、異能の者に助けられた光秀。元親に恩義を感じた彼は、長曾我部家の軍師として、四国平定に協力する。ここから始まる、もうひとつの戦国史が、本書の大きな読みどころなのだ。
また、光秀が本能寺の変を引き起こした理由が、信長を殺すことではなく、諌めるためであったという解釈が面白い。光秀の人物像からすると、そちらの方があり得そう。なのになぜ、信長が死ぬことになったのか。その謎も本書のポイントとなり、読者の興味をグイグイと引っ張っている。これからの展開が楽しみな、シリーズ第一弾だ。