赤佐汰那の書見台 赤佐汰那

「戦国や江戸って、どんな時代なの?」「昔の人たちが喋っていた言葉とか、食べていた料理とか、着ていた服とか、まったく想像できない⁉︎」「時代劇はどこまで本当なんだろう?」などなど。
 とどのつまり、「歴史時代小説をもっと愉しみたい!」、常々そう思っているあなたのために贈るのが、このコーナーです。
 歴史時代作家を目指す人たちも必読、デビューの近道となるかもしれませんよ!

第3話

江戸時代の細かい武家のしきたりを知る



『図録 近世武士生活史入門事典』
 武士生活研究会/編集

 時代小説を読んでいると、一口に武士といっても様々な境遇の者がいるとお気づきになられるだろう。上は殿様、家老級の家臣から中級武士、足軽などの下級武士、さらには武家に仕える奉公人である武家奉公人などがおり、さらに誰にも仕えぬ浪人がいるわけだが、とにかく武士の社会はややこしい。家の格によって服飾や登城時の陣容が定められ、屋敷の門の構え方まで変わってしまう(例えば、御家人の屋敷に門を作ってはならず、木戸を作るのが決まり)。ええい実に面倒な、という方もいらっしゃることだろうが、そういう方は『江戸時代は堅苦しい社会だったのだ』とご理解いただき、時代小説のドラマツルギーを楽しんでいただきたく思う。
 だがしかし、中には『江戸時代の細かい武家のしきたりを知りたい』という、筆者のようなお方もあるかもしれない。そういう方の入り口となりうる本を今回は紹介したい。『図録 近世武士生活史入門事典』武士生活研究会/編集、柏書房)である。
 本書は未だ時代劇が華やかなりし1991年初版、前書きで“時代劇と歴史研究の橋渡しをしたい”旨の意気込みが表明されているのは隔世の感があるが、それでも“フィクションと歴史研究の橋渡しをする”という意義は全く損なわれていない。
 本書は職制から服飾、生活、領地、教育、文化娯楽などさまざまな側面から江戸時代の武士にスポットを当てており、少ないページの中で要領よく武家の生活が浮かび上がるような工夫がされている。その一つが図版の多さであろう。本書は武士に関する図録集としてパラパラ鑑賞するだけでもイメージの構築が容易で、おのずから江戸期武士の生活通になっているというあんばいである。
 また、本書が入門書として非常に優れているのは、図版などの出典をいちいち明記していることであろう。本書を読み終えて、例えば町奉行所についてもっと詳しく調べたいということになった時、容易に史料や参考文献に当たることができるようになっているのである。
 いきなり専門書を読むのはしんどい。かといって、世の中には入門書があふれているがゆえに何から手を付けてよいか分からない。そんなジレンマを埋めてくれる好著である。
 ……それにしても、時代小説ファンが増えることで時代劇が復権し、本書をテレビの前で広げてほしいものだ、と時代劇ファンの端くれとしては祈っているのだが、そんな日は来るのだろうか、というはかない願いを込めて本書を紹介するものである。

出版社:柏書房
刊行日:1991年1月1日
価格:2,718円+税

amazon.co.jp セブンネットショッピング TSUTAYAオンラインショッピング 楽天ブックス


[平成29年(2017)8 月11日]
赤佐 汰那

赤佐 汰那

あかさ たな

著者紹介ページへ