赤佐汰那の書見台 赤佐汰那

「戦国や江戸って、どんな時代なの?」「昔の人たちが喋っていた言葉とか、食べていた料理とか、着ていた服とか、まったく想像できない⁉︎」「時代劇はどこまで本当なんだろう?」などなど。
 とどのつまり、「歴史時代小説をもっと愉しみたい!」、常々そう思っているあなたのために贈るのが、このコーナーです。
 歴史時代作家を目指す人たちも必読、デビューの近道となるかもしれませんよ!

第14話

“屋台そば”が原点
『ラーメンの歴史学』



『ラーメンの歴史学 ホットな国民食からクールな世界食へ
 バラク・クシュナー/著、幾島幸子/訳

 旅行に行っても地元の名物に飽きるとラーメン屋の暖簾をくぐってしまう。接待で福岡にお邪魔した時にもご当地ラーメンを頂いた。家の近辺にもいくつも行きつけのラーメン屋がある。どこに行ってもラーメンラーメンラーメン。おかげで下っ腹が出始め、もうそろそろダイエットを考えなくてはいけないところまで来ている……という悩みは何もわたしだけのものではあるまい。
 そんな私事はさておき、もはやラーメンは国民食であるといってもいい。だが、我々はラーメンについてあまりに何も知らない。
 そんなあなたに捧ぐ本がこちら、『ラーメンの歴史学 ホットな国民食からクールな世界食へ』バラク・クシュナー
/著、幾島幸子/訳、明石書店)である。本書は極東の地で生まれた中華料理のような日本食ラーメンが、一体どういう文化的背景によって誕生したのかを論じた手堅い書きっぷりのラーメン研究書である。
 その書き出しからしてすごい。本書はラーメンを論じるために、中央アジアの麦食文化、シルクロードによる麦食の伝播から話を始めているのだ(もちろん前史的な扱いであるとはいえ)。さらに、空前の美食文化である中華文明、その中華文明の周縁部である日本の食について触れ、近世日本のラーメン事情についても概説した後(本書はなんと水戸光圀ラーメン第一号説を一蹴している。詳しくは本書にて)、ラーメンが“誕生”した近現代へと筆を進めてゆく。
 本書を読んでわかるのは、食がその地域の歴史と密接に関わっているということだ。日本で中華料理が紹介されたのは、中国の留学生を迎え入れていた近代日本の政策があったことが本書によって明かされている。また、江戸時代の江戸における屋台のそば文化の蓄積がラーメン文化の下地になったという指摘もある。
 また、本書は繰り返し『伝統料理とされるものは人工的なものであり、その地域で“伝統的”とされる料理は我々が思う以上にごくごく最近定められたものである』と述べている。日本の伝統食である日本料理すらも最近になってようやく誕生したことを、ラーメンの歴史を叙述したついでに明らかにしている。ラーメンは現代で完成を迎えているわけではなく、未来に向かって進化の旅を続けていると暗に述べているのである。
 ラーメンはおいしい。頭を空っぽにして目の前の一杯を喰らいつくすのも一つの楽しみであろう。だが、その一杯の背後に悠久の歴史を感じ取りながらすするラーメンもまた旨いのではないか、というのが歴史好きラーメンファンの一人としての提案である。もちろん、ラーメンから見た日本近現代という側面を有しているため、資料としても非常に有用である。

出版社:明石書店
刊行日:2018年6月7日
価格:2,500円+税
判型:単行本

amazon.co.jp セブンネットショッピング TSUTAYAオンラインショッピング 楽天ブックス


[平成30年(2018)7月7日]
赤佐 汰那

赤佐 汰那

あかさ たな

著者紹介ページへ