書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

雨と詩人と落花と

葉室麟/著

出版社:徳間書店
刊行日:2018年3月16日
価格:1,600円+税
判型:四六判

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 本書は、二〇一七年十二月に逝去した、葉室麟の遺作である。豊後日田の儒学者・広瀬淡窓と、その弟の久兵衛を描いた『霖雨』の姉妹篇だ。
 主人公は、儒学者の広瀬旭荘。淡窓の養子で、その跡を継いで、私塾の塾主をしている。激情家の彼は、二度目の妻に迎えた松子に暴力を振るっては、そのことに落ち込む。しかし松子は夫の繊細な本質を見抜き、支えていく。やがて江戸に出る旭荘一家。だが松子が病み、衰弱していくのであった。
 広瀬旭荘は、洋学にも理解を示す儒学者であり、豊かな詩藻で知られる文人だ。作者は、そのような人物の歩みをたどりながら、彼の人生と、夫婦の形を活写する。また旭荘を、大塩平八郎の乱や蛮社の獄と微妙に絡ませることで、文人や学者がいかに時代と向き合うべきかも示しているのだ。ここが本書の読みどころだろう。
 さらに松子が病に倒れた後は、逝く者と残される者の心に、分け入っている。そこに込められた作者の思いに、落涙せずにはいられない。

〝『霖雨』〟はこちらです。

霖雨

レーベル:PHP文芸文庫
出版社:PHP研究所
刊行年月:2014年11月10日
価格:740円+税
判型:文庫判

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細谷 正充

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ほそや まさみつ

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