書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

雲上雲下

朝井まかて/著

出版社:徳間書店
刊行日:2018年2月16日
価格:1,700円+税
判型:四六判

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 作者が朝井まかてなので、歴史・時代小説だと思う人が多いだろう。だが本書は、和風ファンタジーである。なにしろ主人公が〝草〟だ。深山の奥に根を張り、なぜか人格を持ち喋る、巨大な草なのである。
 ストーリーはしばらくの間、その草が子狐と山姥に物語を聞かせるというスタイルで進行する。有名な民話をベースにした、数々の物語は、素朴な面白さに満ちているのだ。
 ところが途中で、草たちの前に現れた、小太郎という不思議な少年の物語へと移行。さらにそれを経て、草の正体が明らかになると共に、作品のテーマが浮かび上がってくるのである。
 では、本書のテーマは何か。一言でいえば、物語そのものだ。人間はなぜ、物語を求めるのか。あるいは求めなくなるのか。ファンタジックなストーリーを通じて、作者は物語の持つ根源的な意味を、力強く表現する。小説が、いや、物語が好きな人ならば、いつまでも語り継がれてほしいと願う、愛すべき作品なのだ。

細谷 正充

細谷 正充

ほそや まさみつ

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