書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

恋形見

山口恵以子/著

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2017年12月1日
価格:670円+税
判型:文庫

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 2015年に徳間書店から刊行された、山口恵以子の長篇が文庫化された。ある想いを胸に秘め、太物問屋を大店に育てた、女主人の半生記だ。
 日本橋通旅籠町にある太物問屋「巴屋」の長女のおけい。美しい次女を溺愛する母親に、彼女は疎まれていた。隣家の放蕩息子・仙太郎から貰った言葉と櫛を大切にしながら、早くから店のことを学び始める。父親が死ぬと、若くして「巴屋」の女主人となり、勘当されて行方もしれない仙太郎のために、江戸一番の店にしようと奮闘するのであった。
 聡明で誠実だが、ドライな性格のおけい。下渡海藩の特産品を、工夫を凝らして売り出すなど、商才も抜群だ。そんな彼女の行動により、「巴屋」が大きくなっていく。ここが読んでいて、実に気持ちがいい。
 一方で、母親や妹との確執など、人間関係の悩みは多い。その果てにたどり着いた、ラストのヒロインの姿が感動的だ。波乱に富んだ女性の人生を、とことん堪能できるのである。

細谷 正充

細谷 正充

ほそや まさみつ

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