書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

もんなか紋三捕物帳

守銭奴

井川香四郎/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2017年12月1日
価格:660円+税
判型:文庫

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 四つの出版社を横断して刊行されている、井川香四郎の「もんなか紋三捕物帳」シリーズも、本書で九冊目となった。江戸の岡っ引の元締めと呼ばれる大親分〝もんなか紋三〟は、十八人の子分たちと共に、さまざまな事件に立ち向かう。
 収録されているのは四篇。商家の火事が盗賊一味に繋がっていく「泥に咲く花」、流行病の裏に潜んだ犯罪を暴く「枯れ紅葉」、金貸し娘が巻き込まれた騒動に紋三が介入する「守銭奴」と、どれも読みごたえあり。
 その中で特に注目すべきは、冒頭の「雨宿り」だろう。たまたま入った居酒屋の料理の味から、十五年前の事件を思い出した紋三。駆け出し時代に挙げた手柄は、しかし冤罪だったのではないか。自らの進退をかけて、真実を追う紋三がたどり着いた真実は、苦いものであった。
 過去と現在を巧みに絡ませたストーリーから、単なる捕物ヒーローではない、紋三の人間味が伝わってくる。それがこのシリーズを、一段と深いものにしているのだ。

細谷 正充

細谷 正充

ほそや まさみつ

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