書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

夢裡庵先生捕物帳[上]

泡坂妻夫/著

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2017年12月1日
価格:750円+税
判型:文庫

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 かつて単行本三冊で刊行されていた、泡坂妻夫の「夢裡庵先生捕物帳」シリーズが、上下巻の決定版として帰ってきた。タイトルにある夢裡庵先生とは、八丁堀定町廻り同心の富士宇衛門のこと。空中楼夢裡庵という、文人としての雅号を持っていることから、夢裡庵先生と呼ばれているのだ。
 その夢裡庵が幕末の江戸で、快刀乱麻と謎を解く――訳ではないのが、この作品の面白いところ。第一話「びいどろの筆」は夢裡庵が主人公だが、事件の真相を見抜くのは以前先生という人物。続く「経師屋橋之助」は、以前先生が主人公で、また別人が真相に迫る。といったように、主役と謎解き役が、次々と変わっていくのだ。夢裡庵は、たまに主人公になるものの、ほとんどの話で脇役になっている。実にユニークな捕物帳といえるだろう。
 そしてラストの「夢裡庵の逃走」では、上野の彰義隊に加わった夢裡庵の顛末を通じて、江戸の終焉が見事に描かれている。なんとも味わい深い名作なのだ。

『夢裡庵先生捕物帳[下]』はこちらです。

夢裡庵先生捕物帳[下]

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2017年12月1日
価格:770円+税
判型:文庫

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ほそや まさみつ

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