書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

関越えの夜

東海道浮世がたり

澤田瞳子/著

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2017年11月2日
価格:660円+税
判型:文庫

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 本書は、江戸時代の東海道を舞台にした、連作短篇集である。作者は澤田瞳子。と聞くと、意外に思う人がいるかもしれない。なにしろ作者は、骨太な歴史小説の作家として知られているからだ。だが本書も、抜群にいい作品である。歴史小説の名手は、時代小説の名手でもあったのだ。
 駿河で受け取った花嫁衣裳の代金を失い、途方に暮れる忠助という手代の揺れ動く心を見つめた「忠助の銭」から、京の炭屋の若き女主人が、父親の隠し子の扱いに悩む「床の椿」まで、十二篇を収録。東海道の各地で繰り広げられる物語は、どれも厳しい現実の中を生きねばならない人間の姿を、鮮やかに捉えている。さまざまな人の心を露わにする作者の手つきは、繊細にして大胆だ。
 また、各話の登場人物が微妙にリンクするなど、連作ならではの魅力も横溢している。第一話の主人公の忠助が、最終話に再登場する構成も心憎い。人の世の喜怒哀楽に満ちた東海道。こんな本の旅もいいものだ。

細谷 正充

細谷 正充

ほそや まさみつ

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