書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

北天に楽土あり

最上義光伝

天野純希 /著

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行年月:2017年11月2日
価格:850円+税
判型:文庫

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 今年(2017)、三冊の優れた戦国短篇集を刊行し、あらためて注目を集めた天野純希だが、既刊の長篇だって凄いのだ。それを証明するのが本書である。権謀術数を駆使して出羽国の大大名に成り上がった戦国武将・がみよしあきの新たな肖像を、雄渾な筆致で描き切っているのだ。
 民の安寧と家族の幸せを願う義光。家督相続で父親と骨肉の争いを演じたり、甥の伊達政宗と戦ったのも、すべてはその為であった。こうした義光の、優しい理想を実現したいが故に、策謀を巡らせずにはいられない人間性が、織田・豊臣・徳川と流れゆく時代の中で、活写されているのである。
 また、奥羽の地で繰り広げられる合戦の描写も優れている。特に、天下の行方を左右することになる、最上軍と上杉軍の戦いは、迫力満点だ。
 さらに詳しくは触れられぬが、義光亡き後、過酷な道をたどる最上家に作者が与えた、一筋の救いも素晴らしい。冒頭からラストまで、まさに圧巻の読みごたえであった。

細谷 正充

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ほそや まさみつ

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