書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

御松茸騒動

朝井まかて/著

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2017年9月7日
価格:640円+税
判型:文庫

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 松茸のおうばんぶるまい。といっても料理のことではない。朝井まかての時代小説だ。
 前藩主・徳川宗春が招いたバブルもとっくに崩壊し、今や財政難の尾張おわり藩。それでも太平楽な上役や同輩に、若き藩士の榊原小四郎は怒っていた。ところが亡父の友人たちの不始末に巻き込まれ、まつたけ同心にせんされてしまう。産地偽装が当たり前になっている御松茸の現状を変えようとする小四郎。だが、しだいに自然と人間の在り方を理解していくのであった。
 バブル崩壊後の日本を引き写したような尾張藩は、問題山積みだ。でも、それに怒る小四郎も、己の才を頼み、無意識に周囲を見下す人間であった。そんな彼が、どのようにして変わっていったのか。そこが本書の、注目すべきポイントである。
やがて踏み出した小四郎の一歩は、ちっぽけなものであった。しかし、そこに生の実感がある。不器用に成長していく主人公の姿が、楽しく嬉しい。時代や環境を嘆く若者にこそ、読んでもらいたい作品だ。

細谷 正充

細谷 正充

ほそや まさみつ

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