書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

きらり

志川節子/著

出版社:徳間書店
刊行日:2017年7月7日
価格:1,700円+税
判型:四六判

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 堅実なペースで良作を発表している志川節子の最新刊は、書き下ろしの短篇集だ。元禄十六年から安政二年まで、さまざまな時代のさまざまな場所で生きる人々の哀歓が、六つの作品に凝縮されている。
 冒頭の「天地一転」は、吉田宿で飯炊きをしているおしまという女性が、自分の息子かもしれない若者のきゅうを助けるためにほんそうする。そろそろ人生の終わりが見えてきたおしまが、未来を切りひらこうとする若者に託した想いは、切なくもさわやかだ。
 その他、江戸へ雄飛することを目標とする若者が、現実を知って戸惑う「わんの底」、出島かよいの丸山女郎が、やっとつかんだぬくもりのためにちていく「山の灯」、花火の事故で盲目になった娘が、迷いの果てに自分の道を見つける「やみに咲く花」など、どれも読みごたえあり。
 また、手筒花火・ラン菓子のオリーボール・つまみざいなど、各話で主人公に絡む小道具が、物語に一層の興趣を与えている。作者の実力がかんなく発揮された一冊だ。

細谷 正充

細谷 正充

ほそや まさみつ

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