書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

別子太平記

愛媛新居浜別子銅山物語

井川香四郎/著

出版社:徳間書店
刊行日:2017年5月23日
価格:1,800円+税
判型:四六判

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 文庫書き下ろし時代小説で知られる井川香四郎が、新たな世界に挑んだ。本書は、愛媛の新居浜にあった別子銅山の長き歳月を綴った歴史小説である。
 物語は、羽柴秀吉の四国征伐により、新居郡にある金子城が陥落する場面から始まる。城主から、「生きて国を守れ」と託された三人の若武者は、別々の人生へと踏み出していく。それからいくせいそう。元禄時代になって、三人の子孫が、運命に導かれるように、新居浜の地に集まった。銅山開発のためである。苦難の末に開かれた別子銅山は、時代の荒波を乗り越えて続いていく。
 鉱脈発見から閉山まで、二八三年の歴史を持つ別子銅山は、幕府の貨幣政策に関係したり、経営していた住友家が財閥となるいしずえとなったりした。その銅山の歴史を、若武者の子孫といったフィクション部分を加えながら、作者は見事に描き出したのである。積み重なる銅山関係者の営為に、感動が止まらない。別子銅山は、これ以上はない〝太平記読み〟を得たのである。

細谷 正充

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ほそや まさみつ

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